〜 店に使われている 木の話 〜
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一位 【Japanese Yew】

別名 アララギ (蘭)、スダオノキ、 紫松、水松、オンコ (アイヌ語) とも呼ばれます。
また、檪井とも書きます。

学名   Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.

Taxus は、イチイのギリシャ名 taxosからです。
またtaxosは弓の意味もあるそうです。
cuspidataは、急に尖ったと言う意味だそうです。
Sieb.は、幕末(1823年)に来日したドイツ人の医者シーボルト(Siebold S.と略す事もあります)のことです。
etは、英語の and の意味で、仏語ではet、伊語ではeと表します。
因みに西語(スペイン語)では yです。
Zucc.は、シーボルトの採取した植物を研究したイタリアの植物学者ツッカリーニ (Zuccarini)の事です。(Z.と略す事もあります)

イチイ科 イチイ属
英名   Taxaceae

常緑高中木 (針葉)
植栽地域  全国
原産地   東アジア
中庸〜陰樹
植栽土壌は 埴土を好みます。
根型は 中間型で、樹形は円錐型です。
成長が遅く、移植は難しいとされています。
実にも鑑賞価値があると言われています。
花の時期は 3月〜5月 、実の時期は 10月〜11月です。
利用は防火樹として昔より植樹されました。( 防風植栽ということです)
刈込が可能のため、生垣として利用されました。
現在ではポイント植栽として植樹されています。
一位は雌雄異株という珍しい木です。
葉は、有刺鋭頭で線形ですが、軟らかいため触れても痛くありません。
葉裏に2つの幅広い気孔線があります。

一位の名前は日本語の一位と言う意味で、最高位という意味です。
そうです。一位は日本では一番の木なのです。
その訳は、その昔、神官が君命を拝受する際に、笏という箆板を自分の眼前に掲げ、そこに君命を間違えない様に書き記しました。
君命は第一位に重要なので、その君命を記す笏には一位の木だけが使われたため、この木が一位と呼ばれるようになりました。
また、その笏の長さが1尺だったので、その箆板が笏(シャク)と呼ばれました。
でも、今の神主さんが持っている笏は1尺(約33p)より長くなっていますよね。

一位は岐阜県の大野郡の位山が有名産地で、一位は岐阜県の県木となっています。
北は北海道から南は九州の高隈山まで、深山にポツンと散生していることが多い木です。
北海道や飛騨地方に群生しているところもありますが、現在では極めて少なくなりました。
南に下るにつれて一位の生育量は少なくなります。
あまり大木になる木ではなく、直径60センチを越えることはめったにありません。
成長は実にゆっくりで、80年で直径25センチに満たないくらいです。
関西地方ではアララギと呼ばれ、やはり高貴な木とされています。

香りは白檀に似た香のする木です。

材は、彫刻、細工物に。樹は、庭園樹などとして植えられます。
針葉樹としては重い部類に属し、ヒノキなどよりも堅く強度もあります。
成長が遅いため年輪が密で、木肌は赤く、なめらかで、反りや割れも少なく、重いわりには加工がしやすいため、昔から実に優良な材として評価の高い木です。

種皮は美しい紅色で、コレ食べられるんですよ。(コレ、ホントなんです!)

一般的には木造建築の床柱、床板、鏡板などの装飾部材から、菓子盆、櫛、額縁といった生活用品にいたるまで使われてきました。

飛騨の一位一刀彫をはじめとした彫刻なども有名で、工芸品としても賞用されている木です。

一位の中で種皮が黄熟するものを、キノミオンコ(学名 var.luteo-baccata Miyabe et Tatewaki)と言います。
余談ですが、キノミオンコの学名の一人ともなっている館脇操博士の息子さんと大學で一諸に勉強した御縁があります。

『赤く艶やかな美しさ』、これが一位の木に対する多くの木工職人さん達の感想でしょう。
そんな彫り師たちを魅了してきた木、一位。
最近では大変残念なことに、とみに少なくなっている木の一つです。

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