〜 店に使われている 木の話 〜
 (まつ)

松と杉は銘木中の銘木とされ、松も年を経るほどに増す飴色の光沢と力強く浮かび上がる杢目は何時見ても飽きを感じさせません。
ただ、床材として使える良材がほとんどなくなっていて、希少価値的な価格になってしまいました。
代用品として東南アジアよりラオス松(メルクシ松)が輸入されていて、建材品では板目の単板貼りが、また無垢材としては柾目材が出回っていますが、やはり本物とは違いますねー。 ・・・なんて言うか、やはり日本人の感覚なんでしょうかね。

建築では赤松・黒松を地松と言い区分しませんが、此処では少し詳しく赤松を(当店で使ったため)ご紹介します。




赤松 (あかまつ) 【Red pine】
別名  雌松

マツ科の常緑針葉樹。

分布地は本州の青森から九州屋久島までの山々です。日本産針葉樹の中では分布する範囲が最も広い木です。また、朝鮮にも分布しているそうです。
高さ35m、直径1.5mにもなる木です。

乾燥しやせた荒地や、他の樹木は枯れてしまったような二次林によく育つタフな木です。
木材としての経済林だけではなく、防風林、土砂防止林としても造林されています。
しかし、赤松は塩に弱いので、潮風の強い浜には黒松が植えられています。

ともに雌雄同株(雌花と雄花が同じ木につくもの)で4月から5月頃に花が咲き、雌花は新しい枝の先に13個、紅色のものがまっすぐ付いています。
雄花は新しい枝の下の方に淡黄緑色の円筒形のものがいくつかについており、ここから、黄色の花粉をたくさん飛ばします。この花粉が風にのり雌花にとどく、いわゆる風媒花です。
松ぼっくり(球果)は、花が結んだ次の年の10月頃に熟し、淡い黄褐色となります。
木質で長さ36p、直径3pほどの卵形をして、下向きか横向きに枝にぶら下がっています。
木を伐る時にその木種の発生を守るための方法がいくつかあり、赤松の場合は、この天然下種更新という方法で未来の森を残していくことが多いのです。

樹皮は、若い木は赤褐色でうすく鱗のようにはげ、年をとると、色が黒っぽくなり、亀の甲のように深い割れ目が入いります。
辺心材の境界はやや不明瞭で、辺材は淡い黄白色、心材は黄色を帯びた淡褐色です。
木目は鮮明な木です。

大きな特徴として、脂筋という多少やっかいなものがあります。 ねばねばしたボンドのような松脂(マツヤニ)が通っている部分ですが、乾燥が不十分だとこれが表に出て塗装ムラのように垂れてくることがあります。
この松脂は採取して、塗料や溶剤などに使用できます。
他に大きな生節があります。節というと落ちる(穴があく)からダメと思われがちですが、生節はまわりとしっかりくっついているので落ちることはありません。

材質は密で、針葉樹としては重厚で強く幅広く利用されています。
堅さは中くらいです。加工は容易で、狂いはややありますが、水湿に強く耐久性に富む木です。

用途としては建築材、造作材、土木材、船舶材、バルプ原料、坑木、経木など幅広く用いられます。
黒松より葉が細く柔らかい。脂を特に多く含んだ材は肥松と呼ばれます。
肥松は飾り棚、座卓、茶道具などに加工され、磨きながら使い込むとあめ色の美しい光沢が出るので珍重されます。

余談として、松竹梅は、日本人の祝い事に必ず登場する木ですよね。
そして、最も上位は松です。
それは、日本人好みの非対称の樹形の美しさと、変わらぬ緑の姿、そして荒れ地に根を張る生命力に強いあこがれを抱いたからだと言われています。

← 当店では、初代の看板の柱に赤松を皮を剥いだまま丸太で用いました。

(現在の看板の柱は欅になっておりますが、上部の板は赤松で作られています。)



黒松も付録として少し書きましょう。

黒松 (くろまつ)
別名  雄松・男松

マツ科の常緑針葉樹。

天然分布は、本州北部から四国、九州に至る広い地域にあります。また、朝鮮南部や済州島にも自生しています。

葉は、赤松よりも太くなり、剛く、より低地・海岸近くに多くあります。

樹皮は黒褐色で、辺心材の境界は不明瞭です。辺材は淡い黄白色、心材は淡い褐色です。
そして赤松よりも辺材が多いねも特徴です。
赤松に比べ、幹が曲がったものが多く、枝は太くなります。
また、樹脂分も多く、大きな生節や脂壷があらわれるものがあります。
耐朽・保存性は中位です。ただし水湿によく耐えます。

材質は、針葉樹の中では重硬く、水湿によく耐えますが、表面仕上げはあまり良くありません。
赤松より樹脂分が多く、均質に含まれています。
面材として使用する場合、長い年月、空ぶきして磨くと重厚な光沢のあるものに仕上がります。 
用途は赤松と同様の用途で、建築材、土木材、船舶材、枕木、坑木などです。
建築では玄関の浜床等に用いると、しっとりとした落ち着きと上品さを出してくれる木です。
また、樹幹から松脂やテレピン油を採ることが出来ます。

樹齢150年以上になると銘木として扱われますが、松食い虫などの害により優良な老松が減少しています。古くから防砂林として植えられてきました。



← 黒松の板目


いらっしゃいませ

喫茶 大工集団欅(けやき)
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